1. ゆりクリニック
  2. 病気一口メモ
  3. 炎症性腸疾患

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患とは

炎症性腸疾患とは、原因不明の難治性疾患であり、厚生労働省の難病に指定されています。
主に大腸に炎症(浅い潰瘍形成など)が起こる潰瘍性大腸炎と、全ての消化管(口から肛門まで)のどこにでも炎症(深い潰瘍形成など)が起こるクローン病とに大別されます。
原因としては、遺伝的素因、環境因子、免疫異常や腸内細菌の関与などが考えられていますが、その治療法や予防法は未だに確立されていないのが現状です。

わが国の潰瘍性大腸炎の患者数は166,060人、クローン病の患者数は39,799人となり増加がみられています(平成25年度末の医療受給者証および登録者証交付件数の合計)。
発症年齢は男性で20~24歳、女性では10代~29歳にみられますが、若年者から高齢者まで発症します。特に最近では、高齢発症の患者も多く見られ、基礎疾患を有する患者の場合、治療に難渋するケースも増えています。

特徴的な症状としては、頻回の下痢や血便、腹痛で、特にクローン病では痔瘻などの肛門の病気も起こります。この病気は病変の拡がりや経過などにより下記のように分類され、治療法も異なります。

潰瘍性大腸炎:分類

  1. 病変の拡がりによる分類:全大腸炎、左側大腸炎、直腸炎
  2. 病期の分類:活動期、寛解期
  3. 重症度による分類:軽症、中等症、重症、激症
  4. 臨床経過による分類:再燃寛解型、慢性持続型、急性激症型、初回発作型

クローン病:分類

  1. 小腸型
  2. 小腸大腸型
  3. 大腸型

検査と治療

検査

検査には、各種血液検査と腹部CT検査、そして非常に重要な大腸検査があります。
大腸検査にはバリウム製剤を使用する注腸検査もありますが、正確に病変を診断するには、大腸内視鏡検査が必須となります。
また、効果判定においても、大腸内視鏡検査を行います。
潰瘍性大腸炎は、健常人と比較しても、大腸癌のリスクが高いことが知られており、定期的な内視鏡検査を必要としている疾患です。

治療

治療には外来で行う内服(飲み薬)や外用薬(肛門より塗布する薬)、点滴治療の他、病状が悪化した場合は、早期に専門機関へ紹介し、入院にて上記治療法に加えて、免疫抑制剤や分子標的薬を使用する事もあります。
再燃(治癒の状態を保っていたにも関わらず、ある契機をきっかけに、症状が元に戻り、時に初期よりも悪化する事)と寛解(臨床的にも、内視鏡的にも治癒状態を保つこと)を繰り替えす疾患であるため、長期的に医師と連携して寛解状態を維持する事が、この疾患の治療の特徴と言えます。

若年者から高齢者まで増加の一途をたどっているのが炎症性腸疾患です。
そのため、早期に発見して治療を開始し、寛解した後も、しっかりとしたアフターケアを長期において行うことが大切です。
一人一人経過が違うからこそ、患者さんそれぞれに応じた最適な治療法を考え、日々の診療にあたることが必要な疾患です。

前のページに戻る